犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

ケータイ小説研究2

人気のあるケータイ小説に共通するのは、
普通にみんなが経験することを題材にしているということ。
クラス替え・修学旅行・ファミレス呼び出し・三角関係
宮台真司が地方のテレクラの方がゲットしやすいとか昔言ってたけど、
「恋愛以外にやることがない・娯楽がない」という地方文化が背景にある。
 
そうなると必然的に黄金パターンは決まってくる
 
●主人公は女子中高生。
●舞台は学校。
●主要人物は幼なじみ・同級生。
●そこで繰り広げられる縦横無尽のただれた恋愛関係。
●でも心は純粋。
 
ケータイ小説は、
自分や自分の周囲をとりまく日常に投影して楽しむものなので、
登場人物に強烈な個性は必要ない。
そこで求められるのは、テレビドラマの人物相関図だけを抜き出したような物語。
 
もしもSFやファンタジーをやるなら、「共同体まるごと異次元へ」というパターンになる。これはもちろん元祖はジュール・ヴェルヌの「十五少年漂流記」で、あとは「不思議の島のフローネ」の原作になった「家族ロビンソン」。「時の旅人」の原作である眉村卓の「とらえられたスクールバス」。自衛隊が部隊ごとタイムスリップする「戦国自衛隊」もある意味変化球として入るかもしれない。角川映画の強さの秘密はこの辺にありそう。あとは「漂流教室」とかクラスがまるごと地球防衛軍である「ダイテイオー」あたりもはいるか。で、トドメは「バトルロワイヤル」。
 
重要なのは、「もし自分だったら…」という「if」の部分。
この辺りになるとヤンキーセンスじゃなくて、中二センスというか、中学生が書く小説のプロットみたいな感じになってくる。
 
自分はクラスに友達もいなければ、幼なじみなんてもちろんいなかったので、「学生時代が懐かしい」というのはちょっと理解しがたいのだが、一般の人々にとって学生生活のノスタルジアが計り知れないというのはアタマではわかる。
 
あと、オタクがコンテンツを消費する時というのは、「空虚」な日常を埋め合わせるためだったりするけれど、彼女たちにとってはケータイ小説というのが日常のほんのちょっとした「空白」を埋める程度なんだろうというのは予想がつく。だから逆に言えば短く簡潔でなければならないし、消費サイクルも一定で需要は尽きない。
 
まあこれは初期のラノベと一緒かも知れない。
あかほりさとるや「スレイヤーズ」は「空白」を埋めるためのものだったけど、セカイ系は明らかに「空虚」を埋めるもの。
 
最近知ったのだが、「ヤンギャル文化」と呼ばれるものがあるらしい。
それを理解するためには、ケータイ小説というのは絶好のサンプルであるし、
日常的なスクールライフを彩るカミオジャパンの「おてがみメモ」あたりも参考になりそうな気がする。
http://www.kamiojapan.jp/kids_c.html
「ラブ友」あたりのセンスというのは、甘エロと共に不変なはず。