【ネタバレ注意】『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』とはシンプルに何の話だったのか?
思いっきりネタバレしてるので、そういうのイヤな方は絶対に読まない方がいいと思います。
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25年目にしてようやく完結したエヴァンゲリオン。
そのラストに関して、賛否両論というよりは単純に「無事完結した」という事実に対しての「ご祝儀的な賞賛」の方が多いように見受けられます。
ただ、唯一物議を醸したのはラストのカップリングではないでしょうか。
碇シンジと真希波マリ。
綾波レイでも、式波アスカでもなく、真希波マリという意外なカップリング。
あまりに唐突で伏線が無さすぎることから、綾波派とアスカ派で不毛なバトルを繰り広げるオタクに、庵野監督が冷や水ぶっかけたんじゃないかなんて意見もありますが、いや、伏線ありましたよ? というお話。
初日に劇場でみて、みんなあまりにネタバレに気を使って考察とかせずおとなしかったので、情報に飢えてとりあえずコミック版のラストでも読み返してみるかと思って読み返したら、当時はまったくノーマークだった最終巻のオマケとして巻末に添えられていた「EXTRA STAGE 夏色のエデン」という短編が実は重要な伏線というか、まんまネタバレだったのではないかという事実に気づいてしまいました。
あらすじは、ゲンドウや冬月と同じ大学でキャンパスライフを送る真希波マリが、後にゲンドウの妻となり、シンジの母となる碇ユイに対して「憧れ」と「ライバル心」と「恋心」のないまぜになったような感情を抱くという内容で、そういった心のねじれからユイのメガネを盗んでしまうという話。
で、盗んだメガネを発見され、「欲しいんなら、あげるわよ」ともらい受けるこのメガネこそ、劇場版でマリがかけているメガネなのです。
『新世紀エヴァンゲリオン』14巻189ページより引用
真希波マリがゲンドウたちと大学時代の仲間であったことは劇中、冬月が持っていた写真から明らかになり、アスカの母親説なども流布しましたが、それについては明らかになっていません。
アスカのことを「姫」と呼んだり、なんだかんだ面倒をみたりとそれっぽい描写はありますが、たぶん違うでしょう。
で、今回明らかになったのは、綾波レイが「アヤナミシリーズ」と呼ばれるユイのクローンであったように、アスカもまた「シキナミシリーズ」というクローンであったこと。そしてこのクローンたちはシンジに好意を抱くようにプログラミングされているということ。
この論理でいうと真希波マリも「マキナミシリーズ」であり、ヒロイン全員の名前になぜか「波」がつくという謎も解明されます。
つまりこれらの事実を重ね合わせて判明するのは、新劇場版はシンプルに碇ユイというマクガフィンを争奪する物語だったということ。
シンジもゲンドウも冬月もマリも、そして間接的になんちゃらインパクトのために初号機を必要とするゼーレとかあの辺の組織も、そしてそれを防ごうとするミサトたちもみんな、碇ユイの遺伝子情報みたいなものを求めて奪い合っていました。
ということは、碇ユイそのものである初号機の消滅した世界において、最終的に「碇ユイ」の遺伝子情報をもっとも純粋なカタチで手に入れたのは碇シンジのハートをゲットした真希波マリってことなんですよね。
コミック版だけを見るとマリは女性にときめいているのでLかなと思いきや、けっきょくシンジくんとカップリングされるので「L寄りのB」ということになるんですけど、それは性別じゃなくてその人物の本質に惚れこむというヘテロ的な恋愛感情の一歩先にあるようなロマンチックな物語なのかも知れません。
あるいは、時間も時空も遺伝情報も乗り越えて、結果的に遺伝情報と遺伝情報が結び付くというSF的で壮大な物語として読み取ることもできます。
ということで、新劇場版は碇ユイの遺伝情報争奪戦に真希波マリが勝利するというシンプルな物語であって、シンジとマリのカップリングにはきちんと伏線も根拠もありましたよというお話でした。