犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

むしろ昨今のオタク趣味は、合理的判断の結果なんです

 
 
痛いニュース(ノ∀`):若者の車離れは「家庭用ゲーム機がいけない」とトヨタ自動車幹部
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1327270.html
 
 
いや、そうじゃなくて…
日本人はむしろ合理的でお人好しだからなんじゃないかと思う。
ある意味アタマが良すぎて身動きできないというか。
 
僕は大型免許持ってるけどクルマには乗らない。
それというのも第一の理由はリスクを取りたくないから。
まず自分が運転がヘタだというのもあるけど、たとえどんなに巧い人でも貰い事故からは逃れられない。
ヘタな自分が運転するのは公道で刃物を振り回すようなものだという自覚があるし、そんな刃物を振り回した狂人の群の中に突っ込む度胸はない。
 
あと、クルマはコストと時間など無駄も多い、つまり「非合理」だから。
昔よく先輩のクルマに乗せてもらって遠出すると、渋滞に巻き込まれた。
そうすると一時間や二時間のロスではない。
半日くらいはアッという間に無駄になる。
電車だったらとっくに家についてるよという、あの不毛さが耐え難かった。
かといって、自分だけさっさと降りて帰るワケにもいかない。
 
今なら都心に住んでいるので交通の便は鉄道でまかなえる。
クルマでしか行けないところもあるし、ドライブの楽しさも理解はできるけど、むしろ嗜好品や娯楽としてだったら、コストが掛かり過ぎる自家用車よりもタクシーを選ぶ。
タクシー乗りまくったって、今の生活だったら自家用車を維持するより安い。
 
僕の場合、クルマ社会の恩恵は充分に受けているし、クルマは必要だと思うけど、自家用車は要らないという論理。
 
ニュースのタイトルにあるように「クルマ離れはゲームのせい」というのは間違っているとおもうけど、「クルマ離れ」と「ゲーム好き」が表裏一体なのは確かだと思う。
最近、にわかにライトオタクが増えているのは、みんな合理的になっているからだ。
ゲームだったら、ほんの数千円で何十時間も遊ぶことができる。
娯楽としてはこんなにコストパフォーマンスの高い遊びは他にない。
休日の家電量販店に行くと、ゲームコーナーに老若男女がひしめいていたりする。
昔、オタクといえば他人が価値を見出さないものに対し無尽蔵に金をつぎこむ「非合理」な存在だった。
オタキングが「オタクは死んだ」と言う時のオタクは、まさにこのタイプを指している。
しかし今のライトオタクは「合理的」な判断に基づいてオタク趣味を選択しているのだ。
むしろ安上がりでお手軽だからこそ、アニメやゲームにハマるのだ。
だから金は出さないし、マーケットは熱いのに儲からない。
 
現代人は合理的だからこそ、恋愛に奥手なんだというのも、なんか昔「非モテ」関連の議論でさんざんやった話な気がする。
恋愛はリスクが高いわりに見返りが少ない。
結婚は普通に生きる上で必然性が無い。
特に男性側にとって。
 
女性はいまだに「結婚して子供を産まないと一人前じゃない」という迷信の世界に生きている。
しかも酷いことに、その迷信は政治的な意図をもって押しつけられている。
最近顕著な流れは、「恋愛」と「結婚」は別モノ、だから「恋愛の延長ではなく合理的な判断に基づいて結婚しましょう」という論理。
「婚活」もこうした識者の先導によって煽られている。
 
しかしセックスしたいなら風俗の方が安上がりだ。
承認されたいなら恋愛より仕事の方が、金と承認の一挙両得だ。
癒されたいならペットを飼った方が手っ取り早い。
犬を飼えない住環境だったらDSで『ラブプラス』をプレイすればいい。
いやむしろ、普通にエロゲーでいい。
虚しいというのなら、恋愛だって同じくらいに虚しいだろう。
恋愛至上主義者というのは、単に中毒のターゲットが異性であるというだけなのだから。
 
結局、あとは結婚に何が残っているかというと「相互扶助」という面しか残っていない。
しかし女性が一方的な援助を求める限り、この「お互い様」という認識の上に成り立ったシステムは起動しない。
養われたいけど介護はしたくないというのなら、嫁に使う金を貯蓄あるいは投資して老後に備えた方がよっぽど合理的だ。
 
そもそも結婚の果てに構築される「家族」の価値が暴落している。
家族は重荷でしかなく、子供に未来を託すのは酷というモノだろう。
かつて子供は労働力だった。産んで育てれば見返りが期待できた。
しかし今や、数千万という教育費をかけて大学を出したところで就職は不確実だし、将来自分を養ってくれる望みは薄い。
 
はっきり言って世間が「結婚」と「出産」を推奨するのは国策でしかない。
戦時中に「産めよ増やせよ」で富国強兵したのと同じ。
たしかに人口が増えれば簡単に景気は回復するだろう。そんなもんだ。
しかし少子化対策を叫ぶ政治家がすでに責任を放棄しているのだから、もう歯止めはきかない。
あとはもう、少子化対策という名の利権に老人達が群がるだけだ。
それくらいの利用価値しかない。
 
ちなみにそこまで「家族」というものに対して否定的な僕が、なぜ結婚したのかといえば、世間一般の認識とは別の部分に「合理性」を感じたからに他ならない。
「生活」と「趣味」にプラスして、「仕事」の面でも支えてくれる相手だったからだ。
ある意味、昔で言う農家の嫁とか、家族経営で商店を営んでる感じに近いものがある。
 

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この不況の根源は、みんながそこそこ賢くなってしまったからというジレンマがある。
みんな「企業には騙されないぞ!」という生活防衛に走っている。
だけどその「知のレイヤー」はまだ低い次元でしかないということには気づいていない。
人間にはもう一つ、見逃せない習性がある。
「本当の事より、説得力のある嘘を信じてしまう」というオカルト思考があって、たいていの合理的判断の裏にはオカルトが待ち受けている。
だから「良かれと思ってやった事」が裏目に出て損をしてしまうのだ。
まさに今の状況は合理的判断に基づいてオカルト的な決断に達してしまった結果だろう。
かなり唐突かも知れないけれど、インフレよりもデフレを好む国民性というのがその最たるものかも知れない。
結局、個人が合理的判断で行動した結果、金銭の流れは滞り、深刻な悪循環をもたらしている。
だからといって、自分は損をして社会に貢献しろと強要するのも不可能だ。
 
オールニートの時に飯田先生が言っていたと思うんだけど、お金はコメのように腐らないからみんな貯め込んでしまう。
だから緩やかなインフレが必要なのだというようなことを言っていた。
インフレだと、貯め込んでいるだけでは金銭の価値は下がってしまう。
だったら使ってしまった方が得だという合理的判断が働くから。
 
合理性を餌にして誘導するという戦略は、ディズニーランドが巧いと思う。
思想の世界ではアーキテクチャーが話題になってるけど、ウォルトは50年以上前からそれをやっている。
 
これからの商売は、バカな消費者を騙すんじゃなくて、消費者が合理的判断に基づいて動いた場合に自分も利益を得られるような仕組みを作るしかないんだろう。
そうでなきゃ、あとはもう一度日本人に退化してもらって一億総白痴化してもらうしかない。
まあ、実際にやるなら、そっちの方がよっぽど簡単だし…
 
もしかしたら実際に政治やメディアや企業は、僕たちに「退行」を求めているのかも知れない。
考えてみると『崖の上のポニョ』も、おバカブームもケータイ小説ブームも、「バカになれ」というメッセージだった。
後先考えず行動しようぜ! ロジックよりも欲望に素直になろうぜ!
借金してパチンコやって、セックスして子供増やそうぜ!
みたいな…
まあ動物的に正しい事って、世間に結構受け入れられやすいからね。
あと残る景気対策は宗教と戦争くらいか。
 

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◆追記(200.10.29)
 
おそらくこのエントリーだけを読んだ人にはわかりにくい部分があるので、捕捉でリンクを貼っておきます。
すべて個人的な妄想です。上から目線ですみません。
 
「人は真実よりも、説得力のある嘘を信じてしまう」という話はこちら↓
 
セカイ系な親父の鬱な話
http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20090625
 
◆集団ストーカーの恐怖・前編
http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20090628
 
◆集団ストーカーの恐怖・後編
http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20090629
 
 
 
なぜポニョを「バカになれ」というメッセージと捕えているのかという理由はこちら↓
 
◆ヤンキー回帰としてのポニョ
http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20080817
 
<上記へ至るまでの過程>
◆本当は怖いポニョの都市伝説
http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20080803
 
◆本当はあまり怖くないポニョの都市伝説
http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20080805

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■追記2010.02.03

◆ゆとりの次は「さとり世代」?
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/02/news060.html 

なるほど。若者の合理性は「さとり」近い。
宗教的な解脱も、本人の思い込みによるところがあるし。
他人からどう見えようと、本人が「悟った!」と思った瞬間に悟りは開けてる。

■追記2010.12.08

◆【社会】 「クルマ買うなんて、バカじゃないの?」…モノを買わなくなった若者=「嫌消費」世代、仲間にバカにされることを恐れる
http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1291788311/