犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

災いの都市計画

 都市というのはたいてい大火災や大震災や戦災で消失した跡地にできる。何もない広大な土地を計画的に整備するには、皮肉なことに何らかの「災い」が必要なのだ。だから都市工学の観点で言えば例えば9・11テロの跡地には慰霊碑や公園なんかではなく、世界貿易センタービルよりデカいタワーか超巨大ショッピングモールをつくるべきなんじゃないかと思う。実際、そういう計画はあるらしいが、今は国威発揚のための「傷跡」として利用されているのが現状だろう。
 
 だが、「災い」を心待ちにするような都市計画はもはや不謹慎以外の何ものでもないので、その代わりに発達したのが埋立地という手段だった。しかしこれには交通手段を確保するまで都市の発展が停滞してしまうという難点がある。この難関を乗り越えたからこそ今の舞浜リゾートがあるわけだし、これに失敗したからこそお台場は苦戦している。そこで登場した最近の流行りは都心にある巨大工場を郊外に移転して土地を確保するという恵比寿や大崎を典型とした再開発だったりする。これなら在来線を利用できるし、もともと人々の動線は確保してあるからあとは「立ち寄ってもらう」だけでいい。
 
 発展した都市というのはどこも計画的で、カオスな部分でのおもしろさというのはすべて後付けだったりする。むしろ90年代の渋谷があんなにおもしろかったのは計画性を失って衰退しつつある時に、荒廃したストリートに行き場のない若者が流入したからだ。西武・東急資本によって構築されたあらゆるものが崩壊し、散り際にひときわ美しく輝いてしまったのだ。若者が遊ぶにはそれでちょうど良かった。だけど、十代の若者をターゲットにした商品は安くなければならず、商売として考えると利益率はあまりよろしくない。小銭しか持たない子供だけで遊びに来られても、ダメだったのだ。子供をターゲットにするのは間違っていない。ただ、子供たちの背後に控えている祖父母や両親のサイフを巻き込まなければ意味がないのだ。
 子供だけで遊びに行ける場所というのは正直、あまり儲からない。他の遊園地に比べてディズニーランドがひとり勝ちしてるのも、子供だけで遊びに行くところというよりも「家族揃って」というイメージを大衆に植えつけることに成功したからだし、逆に家族ではなく若いカップルをターゲットに絞ったディズニーシーが敗北している要因もそこにある。