犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

夢の王国のハイエナ商法

 ディズニー商法は意地汚いと誰もが言う。しかし、そんなディズニーよりも浅ましい人たちの話。
 
 なぜ舞浜駅が「東京ディズニーランド駅」ではないのかというと、駅名にしてしまうと駅前にパチンコ店やラブホテルが作られた時に「東京ディズニーランド駅前店」みたいな名称を使われても文句が言えなくなってしまうから……という話は特に有名だが、昔からディズニーに便乗して商売をしようという人間はあとを絶たない。TDLオープン当時は、周辺に「ミッキーまんじゅう」ならぬ「ミツキーまんじゅう」の露店が出ていたなんて話も有名だったりする。そういう便乗商法から身を守るためにも裏金疑惑で暴露された右翼との関係が一役買っていたのかも知れない。オープン当時のことは知らないが、最近ではまったく露店を見かけない。たまに焼き芋屋なんかが屋台を引いてやってきても、OLCのキャストが「オヤジさん……この辺て屋台とか他に全然ないでしょう。ちょっとおかしいと思わない?」「ああ……そういえば……」そんな会話を交わすと大抵相手はスジもんがバックについていると勝手に思い込んで去っていくというようなウソかホントがよくわからない噂話を聞いたことがある。それだけ二十数年間に積み上げた実績が、今では真偽はともかくハッタリとして通用するようになっているというわけだ。
 
 ネットの普及や、コミケなんかで売られるアニパロ同人誌が市民権を得ることでオタク界隈では「二次創作は当然の権利」みたいに勘違いされている向きもあるが、実はそんなことなくて、前にも書いたけどコミケに通うようなオタクがターゲットのエロゲーメーカーなんかが同人活動に好意的だったりするのはそれが直接広告費ゼロの宣伝活動になるからであって、オタク以外の小さな子供たちやファミリー層に比重を置いているポケモンやディズニーが著作権にうるさいのは当然のこと。また、小学生がプールに描いたミッキーの絵を消させたという話は悪名高きOLCを象徴するエピソードとして広まっているが、そこまでOLCが神経質にならざるを得なかったのはミッキーをはじめとするディズニーキャラクターは米国ディズニー社からの借り物に過ぎないからだ。人から借りたものだからこそ、粗末には扱えない。実際には海外だともっと大雑把で、ディズニー系のポルノサイトなんて英語で検索すれば腐るほどあるし、ディズニーに便乗した書籍を告訴した際もディズニー側が負けている。
 
 ただ、そこまで徹底しても、法の目をぬって便乗しようとするハイエナは舌なめずりしてディズニーを狙っている。たとえばTDLの年間パスポートを買って毎日のようにショーやパレードを撮影しにくる熱狂的なファンがいる。彼らの中には撮影したビデオを編集してパッケージとしてヤフーオークションなどで売っている場合がある。あからさまに売るとバレるので、パークで無料配布されるガイドマップを出品し、その「おまけ」としてDVDが付いてくるということになっている。厳密にはこれでも法律上、著作権の問題をクリアしたことにはなっていないはずだが、彼らは明らかに確信犯なので大義名分なんてどうでもいい。DVDは1枚を3千円前後で落札され、それが数十枚売れるから小遣い稼ぎとしては悪くない。
 
 また、キャストもあなどれない。キャストになればIDを提示するだけでディズニーグッズが何割引かで買えるようになる。やはりこれもネットオークションで普通に売りだせば、定価で売れたとしてもいくらか儲かる。プレミアが付けばさらにボロ儲け。社内にあるキャスト用の店では季節遅れのグッズが数十円とか数百円でセールされるので、それを売ってさらにボロ儲け。イベントで余ったメダルやファスナートップがキャストに配布されることもあるし、キャストにだけ配られる記念品などもあるのでそういうグッズも金になる。さらに勤務500時間ごとにパスポートが2枚配られるので、即、金券ショップ行きとなる。今はすっかりネットオークションにお株を奪われてしまったけれど、昔は裏ディズニーショップがあって、キャスト限定グッズやディズニーランドの飲食店で使われている「OLC紅茶(箱に「OLC」と記載されているだけ)」なんていう盗品が出回っていたらしい。こうしたサイドビジネスのために週に2日勤務でキャストをやり続ける専業主婦なんかも少なくないという話をたまに聞く。
 
 それと明らかにヤクザの資金源として利用されているのが年末年始のカウントダウンパーティー。パーティーへの参加には事前に抽選で送られるチケットが必要なのだが、数年前には当選者がパーティーの数日前から舞浜駅周辺にテントをはって場所取りをするというのが恒例になっていた。その名残でいまだにものすごい行列が出来る。そこで、その場所取りを有料で行っている業者がいるらしいのだ。とにかく列の先頭をとるために必至の形相で走り込んでくるオヤジが毎年数人いる。そして数十人分の場所をキープしてしまう。チケットは抽選だから、数十人単位の団体なんてあるはずないんだが、そういう「不思議なこと」も世の中には実在するから不思議だ。業者同士が先頭争いでトラブルを起こすこともよくあるらしいが、たしかに向こうも商売だからお互いに一歩も譲らない。たしかに、一晩で数十万から数百万稼げるのだから、暴力沙汰も辞さないだろう。