犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

セカイ系な親父の鬱な話

 
父親がまた「引っ越し」の話がしたいと言って、来た。
隣に某宗教団体の本部があり、24時間監視されているので、引っ越したいというのだ。
思えば、そんな引っ越しに付き合わされて、何度貯金と労力を浪費してきたことか…
もう2,3回は引っ越しているし、両親ともに同じ病理を抱えているので、立て替えた引っ越し代だけで数百万はいってるだろう。
稼いでも稼いでも、貯金できないわけだ。
 
うちの父親は時限爆弾のようなもので、無碍に扱えばいつ何をしでかすかわからない。
愛情に飢えているから、実の息子にかまって欲しいのだろう。
今のところ、人に危害を加えるようなことはまったくないが、その意味不明な言動に周囲の人たちは困惑している。
統合失調症と言うより、妄想性人格障害なのだろう。
まさに春日武彦氏の『屋根裏に誰かいるんですよ。』に登場する患者と言動が一致する。
精神科医に相談に行ったら、病気はクスリで治せるが、妄想は治しようがないと言われた。
 
最近は遠まわしな説得の甲斐もあって、眼科や内科には自分から「行きたい」と言い始めるようになったので、昔よりはましになったが、以前は病院はすべて某宗教団体の手がまわっているので行かないと言って、みのもんたが司会をするような番組で知った民間療法ですべての病気を治療しようとしていた。
そのおかげで身体の異常を放置したあげく失明し、それを眼科の手術で治して貰ったのに、今度は「あの医者に目を潰された、手術をする前はもっと見えた」と逆恨み。
被害妄想というのは本当に疲れる。
そもそも僕の払った手術代も、手術してくれた医師の労力も、すべて感謝されることなく「憎しみ」に転化されるのだ。
こんな理不尽な話、あるだろうか。
 
だいたい病院に行くときは、僕が付き添わないといけない。
付き添えば朝から夕方まで、丸一日潰れる。
こっちは仕事をしなければ金が稼げないというのに、それをよく理解していない。
失業保険と母の稼ぎで、どうにかこうにか人生の半分くらいは働かずにすごし、団塊世代の特権で年金暮らしまで逃げ切った人間には、働かないと金が貰えないと言うことの意味がわかってない。
金は国から貰えて当然、モノは安くて当然、家族は自分に優しくて当然と思っている。 
自分で家庭を破壊しておきながら、「やっぱり最後に頼れるのは家族だけだ」などとほざく。
正直、甘えにしか見えない。
いや、甘えではないのはわかっているし、本人にとってはその妄想が非常に深刻なのもわかる。
しかし、これではこっちの身が持たない。
やることは山ほど在るのに、手を付けられない。
頼むから人様に迷惑かける前に、死んでくれというのが本心だ。
しかし本人は「死んでたまるか」「殺されてたまるか」「オレは100歳まで生きる!」と豪語している。
 
なぜ無意味な引っ越しに付き合わなければならないのか。
なぜ勝手な妄想に振り回されなければならないのか。
オカルトほど馬鹿らしいものはない。
ありもしない幽霊のような存在に振り回されて、あげく金を浪費し、人様に迷惑をかける。
 
被害妄想と都市伝説は似ている。
どちらも真実を確認しようとしない。
だから「そんな気がする」から「確信」まで、ひとっとびに跳躍する。
「気のせい」なのに「気のせいじゃない」と言い張り、「妄想」なのに「妄想じゃない」と言い、自分の間違いをすべて世界の方が間違っていると断言する。
セカイ系とはつまり、そういうことなのだ。
身も蓋もなく、精神病理でしかない。
それが文学的に昇華するとラノベになる。アニメやマンガの格好の題材になる。
つまり病気の人間が共感する、病人による病人のための作品がセカイ系なのだから、それが健常者にとって面白くないのは当たり前なのだ。
あるいは単なる甘えか、時代錯誤のロマンチズムにしか見えないだろう。
セカイ系は不毛だと、腹を立てるのも馬鹿らしい。
 

                                                    • -

 
引っ越しの相談をしたいという話でよくよく聞いたら、それとは別の話になって、借金があることが判明した。
大阪へ引っ越すときに銀行のカードで借りた金が50万。
毎月いまだに1万円ずつ支払っているという。2006年から2013年まで、毎月1万で84万、利子が34万…
 
妻にはつねづね、困った親だけど消費者金融とかには手を出さないだけ感謝しなきゃと言ってきた。しかし、前言撤回。子供を困らせること全般に手を出すクズ親だった…
今はもうやらなくなったけど、昔は酒もタバコもパチンコもやっていたし。
 
引っ越すとか言う前に、まずは借金を清算する方が先だろうと言うと、「今借金を返すと貯金がなくなる」「毎月1万円だったら充分払える」「とにかく命には変えられない、今すぐ引っ越さないと殺される」と言う話を繰り返す。
しかも「目がどんどん見えなくなっているので手術もしないといけない」という。だったら引っ越してる場合じゃなくて手術だろうというと、また「目より、まず命の方が大切だ」と、よくわからん理屈で話がループしはじめる。
 
あまりの馬鹿馬鹿しさにあきれ、僕が全額支払うから今すぐ電話しろと言うと、電話は盗聴されてるからできないという。だったら僕の携帯を使えというと、どこから借りているのかもよくわからないのだという。
根本的に問題を解決しようとすることから回避する、その性格が「妄想」を生むのだとつくづく痛感した。
 
週に2回も3回も来られると、こっちは睡眠時間と仕事する時間を削られるというのに、それに加えてこの精神的なダメージのデカさはもう……言葉にもならない。
なにか楽しいことがあっても、親からの電話一本ですべて台無しにされる人生。
馴れたつもりだったけど、このバカ親に付き合って不毛なことに金銭が湯水の如く流れ去っていく様を見るのは実に虚しい。
その金が、未来の幸福につながらないのが、なおさら切ない。
 

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