犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

日和見主義

 
先週末、オールニートニッポン『巨椋修のオグラジオ2』というネットラジオで新進気鋭の経済学者・飯田泰之先生とご一緒させていただいた。
 
僕は胸をはって「日和見主義者」を自認しているので、人の話を聴くとすぐに傾倒してしまう。
今回も、そんな感じだった。
ポリシーが無いと言われそうだけど、むしろポリシーを持って日和っている。
ちょくちょく考えを変えるというよりは、「過去の自分」より「未来の自分」を信じているだけなのだ。
 
知識や情報を積み重ねれば、より真実に近づけるだろうし、たとえ間違っても修正できる。
むしろ一貫性や信仰ほど恐ろしいものは無いと思っている。
過去に執着していたら、死ぬまで一生、間違いや誤解を抱えたままの人生かも知れない。
あやまちと修正を繰り返せば、とりあえず100%間違いだらけの人生は回避できる。
どんなにバカでも、たまには最良の答えを見いだせるかも知れない。
人生でトータルすれば、正解率数%くらいにはなるだろう。
そういった意味で、今回もかなり日和らせていただきました。
 
放送は終わってしまったけれど、何日かしたらポッドキャストで聴けるようになるはずなので、聴き逃した方は是非そちらを。
 
オールニートニッポン
http://www.allneetnippon.jp/
 
■こら!たまには研究しろ!!(飯田泰之先生のブログ)
http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/
 
不登校・ひきこもり・ニートを考えるブログ(巨椋修先生のブログ)
http://net-media.fhn-tv.main.jp/
 

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以前、『ワーキングプア死亡宣告』には、流行に乗って新自由主義批判とインフレ批判みたいなことを書いてしまった。
まさに当時、僕も日本はもう成長しなくていいんじゃないか的なことを考えていた。
要約すれば、右肩上がりに土地の値段が上がり続けることを前提にしたサブプライムローンなんて素人目に見てもおかしいじゃないか。土地の値段は変動するものなんだから、上がれば落ちることだって予測できるはずだ、みたいな感じで。
まあ、たしかに土地の値段が変動するのは事実なんだけど、右肩上がりに上昇し続けるって部分に関しては、実はマクロな視点で見ると有り得ることなんだなあという当たり前のことに気づいてしまった。
考えてみると明治や昭和を経て、実際に物価は上昇し続けたわけだし、かつては1銭2銭でやりとりしていたものが、そのうち100円札とか現れて、今はその100円札はなくなって1万円札になっている。
サブプライムローンの仕組みに欠陥があったことを、僕はすべてインフレのせいにしてしまっていた。
まさに素人考えで上っつらしか見えてなかったんだなあとつくづく思う。
 
あまりよくは理解できていなんだけど、飯田先生はリフレ政策を支持しているらしい。
デフレが続けば、極端な話、物価は0円になり、働いても給料が貰えなくなるという最悪の結末がある(ような気がする)。
でも、計画的にゆるやかなインフレを起こしていけば、とりあえず経済は回り続ける。
バランスを取るには物価の上昇に収入が追いつけばいいわけだし、1万円札で足りなくなれば10万円札、100万円札に切り替えればいい。
とか、そんなような感じなのかなとリフレ政策のページを見ながら無いアタマを使って考えてみた。
 
おそらく知識や情報や理解度によって世界の見え方は180度変わってしまう。
つくづく自分の浅はかさを思い知った。
木を見て森を見ずとは、まさにこの事だなあと思う。
社員を守って会社が潰れたら元も子もないじゃないかという巨椋さんの話にもつながる。
こういった話は例えば、エコとかにも通ずるのかも知れない。
地球に優しいことって、実は人類に取っては厳しかったりする。
石油掘るの止めたり、コンビニを全面禁止したらさぞかし生きにくい世の中になるだろう。
だから世のエコ・ビジネスはなるべく地球よりも人類に優しく、カネが動くように仕組まれている。
廃材から一度使った釘を引っこ抜いて再利用するというのは究極のエコだけど、それじゃカネが動かない。
だから使い終わったペットボトルを業者が回収して、工場で加工して誰も使わないようなハンガーや植木鉢にリサイクルしたりする。
 
ただ今回の話は、地球のために人類は滅びろとか、会社のためにワーキングプアは死ねという話ではなく、経済学者の仕事って言うのは両者のワガママを聞きながらバランスをとっていくものなんだなあと、飯田先生の話を近くで聞いていてわかった気がする。
だからわざわざ、フリーターやニートの話を聞きに来てくれてるんだろうし、役所の仕事もきっちりこなしているわけだ。
なんだか飯田先生の話を聴いていると、経済学ってカウンセリングみたいだなあと思う瞬間がある。
おそらくバブルというのは、人間の感情や欲望が先走って経済を急激に動かしてしまう現象で、リフレというのは経済側から環境を整えることで人間の感情や欲望を抑えながら暴走しないように配慮する政策なんじゃないかと思う。
 
今、世の中は統合失調症によく似た、被害妄想状態に陥っているのかも知れない。
「言いしれぬ不安感」に襲われ、その原因を突き止めるためにみんな、過去へさかのぼってアレコレ理由を探し出す。
そして「新自由主義」や「小泉政権」や「ブッシュ大統領」をヤリ玉に上げる。
だけど、仮に今の状況が「心の病」だとしたら、まず治療の方が先だろうと思う。
病気の原因を追及することは無意味ではないけれど、不安の原因を探ることにはそれほど意味がない。
統合失調症の場合、その不安要素を取り除いても別の理由を探し出してもっと不安がるだけなのだから。
 
どうも僕も含めて生活に追われている人間というのは、どうしても目の前のことに夢中で周囲が見えなくなりやすい。
何しろ、死んでしまえばそれまでなのだから、他人のことになんか構ってられない。
でも、ちょっと周囲を見回すための「余裕」や「冷静さ」は、知識や情報で得ることができるんじゃないかと思う。
今回の放送を通じて、世界の見え方が180度変わってしまう瞬間を味わった視聴者もいたはずだ。
 

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