犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

 
話は変わって放送中、僕は非正規社員ワーキングプア脱出法として、もっと「兼業」や「副業」をやればいいんじゃないかという話をした。
そうすれば、とりあえずひとつの仕事を切られて収入がゼロになるというリスクは回避できる。
それだけじゃなく、複数の仕事を同時にやるメリットは他にもある。
そのあたりを補足したい。
 
僕の場合は普段、身体を動かすバイトをしているので、ライターやデザイナーという椅子に座りっぱなしの作業で疲れた時には良い気晴らしになる。
また、バイト中にマンガ原作のアイディアを練ったり、デザインの構想をアタマの中で組み立てたりもする。
あるいはバイト中に目にする風景からインスパイアされる事もある。
相乗効果で、ひとつの仕事がもう他の仕事の糧にもなる。
 
たしかに今の僕の状況はちょっと特殊かも知れないけれど、べつにクリエイティブな仕事との兼業である必要はない。
普通の人だって、まったく別の職種と兼業すれば、その効果は2倍にも3倍にもなる可能性がある。
 
厚生年金と健康保険は週に4日シフトで働けば会社が半分負担してくれるので、月曜から金曜までは生活費を稼ぎ、残りの1日〜3日は気晴らしになるような仕事をするのがいいんじゃないかと思う。
もうひとつの仕事は、やってみたいけど時給が低いからちょっとなあと思うような仕事でもいいし、何か現物支給や従業員割引でメリットのある仕事でもいい。
例えば飲食店ならまかない付きだったりするし、ディズニーだったらキャスト割引でグッズが安く買える。
介護なんかはかなりハードだけど、精神的な満足感を得られたりもする。
365日介護っていうのは収入的にも肉体的にも厳しいし、生活が困窮すれば精神的にもつらいかも知れないけれど、週に何日かだったら気楽に仕事を楽しめるかも知れない。
あるいは路上で歌をうたったり、つげ義春の『無能の人』みたく路上で拾ってきた石とかを売ってもいいと思う。あまりオススメしないけど、ブログが趣味ならアフィリエイトとか*1

忙しすぎて休む間もないとか、そこまで自分を追い詰める必要はない。
ちょっと「遊び」や「余裕」のある仕事でお金を稼ぐっていうのがポイントだと思う。
正社員のマネをしてひとつの会社に奉仕しても、心と身体を壊してしまっては元も子もない。
ひとつの会社で働くよりも視野は広がるだろうし、僕のような相乗効果もあるだろう。
だいたい、どうせ不安定な非正規雇用しか仕事が見つからないなら、むしろ非正規のメリットである「時間の自由」を最大限に利用すればいい。
ひとつの仕事で生活費がまかなえないなら、ふたつでもみっつでも仕事を増やせばいい。
その代わり無理はしないで、きっちり時給に見合った働き方をする。
どうせ取り替え可能な使い捨て労働なんだから。
あと、気晴らしは酒やパチンコのような浪費ではなく、労働でカネを稼ぎながら楽しむのが理想だろう。
 
まあ、実際には地方に行けば仕事の選択肢はないし、仕事そのものが無いんだって言われるかも知れない。あるいは、非正規なのに時間の拘束が厳しいところもあるだろう。
時間の拘束はともかく、「仕事が無い」というのはいかんともしがたい。
最近は「雇用創出」とか言うけれど、個人レベルでなんとかならないものかと思う。
そこで提案したいのが、個人ではじめる「プチ雇用創出」。
たとえば、やはり生活費を稼ぐためのバイトか派遣はひとつやっていた方がいい。
それにプラスして、自分の周りで「中間マージン」の取られない仕事を探す。
僕の場合、それは「きぐるみ」だった。
フリーライター時代、このまま雑誌に書き続けてもドン詰まりだろうと思ったので、何か人とは違うことをやろうと思った。
でも、起業するほどの度胸はない。
そこで、着ぐるみだったら制作費に30万円程度かかるだけ。
店舗も人件費もかからないから、維持費はゼロ。
失敗しても初期投資の30万円を損するだけ。
リスクは限りなくゼロに近い。
すぐには軌道に乗らなくても、持久戦でやれる気がした。
結局、今では着ぐるみは3体になったので10年経たずに資本金は単純計算で3倍。
事業としてはあまり儲かってるうちに入らないだろうけれど、それに付随して出演料や商店街の広告デザインなど、自分自身に対する仕事の依頼は数知れない。
おそらく、着ぐるみをやってなかったら僕なんかに本の執筆やデザインの仕事なんて回ってこなかっただろう。
そういった意味で、雇用の創出になっていると思う。
 
これを普通の人に当てはめれば、近所の人の犬の散歩を代行したり、知り合いの介護をしたりでお金を貰うっていうのはどうだろう。
デザインができるなら、出版社を回るんじゃなくて僕のように地元の商店街で営業すると、意外とあるかも知れない。
メジャー誌だの大手企業だので血みどろの競争を繰り広げるより、需要のあるところへ自分から出向けば、たとえヘタでも意外と通用するものだ。
世の中、何かをやったらおこずかい程度のお金をくれる人はいたりする。
愛人とかヒモもそうだし、ピンハネをするような派遣会社は通さなくても、直接足で探せばなんかしら仕事があったりする。
そもそも派遣会社の存在意義を考えてみると、それは個人の「信用」を担保してくれるから企業は得体の知れない人間を雇うのだ。
僕も最初に商店街に顔を出した時には、泥棒か何かのような目つきで睨まれた。
今は自分の作ったキャラクターが「信用」の担保になっていたりする。
自分が依存しているものの本質を読み解いて、その代わりになるものを見つけると、意外と問題は解決しやすかったりする。
 
派遣というのは結局、中間マージンを取られる仕事だ。
大企業なんかはこれまで問屋を通して取引していたのを、中抜きする業者を排除して直接取引で商品の単価を下げていたりする。
これと同じ事を個人レベルでやればいい。
上前をはねるようなヤツらを抜きにして、直接取引すれば先方はこれまでより安く、こっちはやや高く商売ができる。
(まあ、この不景気でほとんど仕事の単価はダンピング状態だったりもするんだけど…。その辺りは一考の余地がある)
 
そういえば副業や兼業で忘れがちなのは税金だろう。
あんまり派手に稼ぐと税務署がうるさいので、その辺はうまくやった方がいい。
べつに起業しなくても「屋号」というカタチで僕のようにデザイン事務所的なものを名乗ってもいい。
仕事に必要なものなら、経費で落とせば確定申告でいくらか戻ってくる。
ライターを名乗っていれば、本も経費で買えるようになる。
知ってさえいれば得することは、世の中にたくさんあって、高学歴の金持ちは僕たちよりもそういう知識に長けているのだ。
僕のような偏差値アンダー50の高卒にこそ、知識と情報は必要だと思う。
 

ワーキングプア死亡宣告 (晋遊舎ブラック新書 13)

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*1:今からはじめるなら、ブログもアフィリエイトも時間の無駄だと思う。労働に対する見返りは極端に低いし、中間マージン取られまくる手段なので