犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

映画『L change the WorLd』


ハッキリ言ってモンド映画だろ、コレは…

いや、誰の目から見ても明らかにフィクションだから、ホントはモンドじゃないけど、この猟奇で悪趣味なウィルス描写をクソ真面目にやる姿勢というのはどこか狂ってる。なんか差別意識とか教育的配慮とか一切ナシで、こんなモンを全国の劇場にバラまくなんてテロだよ、テロ。しかも一般客が金払って巨大スクリーンでこれを見て泣いたり笑ったり怯えたりしてるのかと思うと、そっちの方がよっぽど面白かった。

ウィルスに感染するとじん麻疹が出て、それを潰すと膿がドローっと出て、全身から血を吹いて、最後は目からドバーッと血の涙を流して死んでいくという、そこの部分だけヤケにこだわった感じの映画だった。他はわりとサクッと軽い感じなのに……

前半は「地球のために人類は滅んだ方がいい!」とか、そういう中二病的ストーリーなんだけど、中盤以降の盛り上がりは凄かった。バカ映画で済ますにはもったいないくらいの大盤振る舞い。やっぱり大衆娯楽は楽しいなあと心から思った。なんか、ロートレアモンとかばっかり読んでた中学生時代の自分に観せてやりたい。おまえが鬱々やってる間に、庶民はこんな血がドバドバ出る映画観て喜んでるんだぞ! って。この不健全さ、学校サボって植物園で日向ぼっこするような文学少年よりよっぽど上だろ。

この際、再現性なんて無視して原作とは逆ベクトルにはっちゃけても良かったんじゃないでしょうか? 全編、ジャニタレ出演のミュージカルにしちゃうとか、テニスバトルや紅白歌合戦みたく本編とは無関係な場面ばかり盛り込んで遊ぶとか……
http://wakusei2.exblog.jp/3798136/

まさに、こんな感じ。
白塗り呪怨メイクのLタンがママチャリに乗ったり、電車の吊り革にぶら下がったり、お菓子食べたり、背筋のばしたり、本筋とはあまり関係無くそんなことばっかりしてる映画だった。他にもメイド喫茶・ネットカフェ・痩身虚弱ロリ・南原のFBI捜査官、どれもいいダシ出てた。
特に南原は最高だった。画面に映ってるだけで思わずニヤニヤ。なんかこう、初めから最後までくすぶるような笑いを提供してくれた。
南原以外の登場人物も全員、演技が変だったけど、ハリウッド向けにはあーゆうのがいいんだろうか? いや、イヤミではなく。

なんか褒めるふりしてけなしてるんじゃないかと誤解されそうだけど、本当に面白かった。ちゃんとLがカッコ良く見える場面もあるし、劇場に明かりがついた瞬間に周囲を見まわしたらみんなウィルスにやられたみたいに真っ赤な目をして血の涙を流してたから、一般ウケするくらいに感動できる映画だったんだと思う。ってことは、逆に言えばラストで泣ければ、ココまでやっていいってことか?

スウィーニー・トッド』がR15指定だったら、こっちも何らかの規制があっておかしくないと思うんだけどなあ。もしかするとスウィーニートッドはストーリー上の必然性とか共感できる部分があるからダメなんであって、むしろ唐突に顔中じん麻疹が出てゲル状のモノを吐きながらゾンビ顔で血の涙流すのは、深い意味とかないからOKなのか。あそこまで無意味にグロいと、青少年に悪影響とかなさそうだし。

よく犯罪心理学の本とか読んでると、なんでみんな犯罪者に興味を持つのかというと、代理満足や疑似体験みたいなもので、自分の中の後ろめたい欲求を犯罪者に託してるんだという話が出てくるけど、まさにそんな感じ。考えてみると中世ヨーロッパや江戸時代なんて処刑が庶民のレジャーで、ギロチンとか獄門を見にみんなゾロゾロと集まってきたわけだから、今の映画館て処刑場の代わりになってるんだろうなあ。こりゃもう、シネコンをガンガン作って日本中にあーゆう映画を流してガス抜きしまくるべきだと思う。

『発狂する唇』と『恋空』を足して2で割らなかったような、そんな映画でした。
これ、テレビでやるのかなあ……

L change the WorLd
http://wwws.warnerbros.co.jp/L-movie/

◆『L change the WorLd』が本家『デスノート』を上回る高評価【ぴあ映画満足度ランキング】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080214-00000001-pia-ent