犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

感想

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版: 破』<ネタバレ注意>

目の前で仲間が殺され続けてるのにエヴァに乗れないとうずくまり、「だって仕方ないんだ」と言い訳してしまうという、あそこまでダメなのはシンジくんがダメなオタクで社会性の希薄な引きこもりだからじゃなくて、その数話前でさんざん父親に人殺しを強要さ…

ポニョと漱石、その後

親子という病 (講談社現代新書)作者: 香山リカ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/09/19メディア: 新書購入: 1人 クリック: 14回この商品を含むブログ (23件) を見る漱石は死ぬまで「母に愛されなかった」という思いを抱いていたらしい。 なるほど、宮崎駿…

オレはポニョが好きだ

サカナのポニョも 半漁人のポニョも 人間のポニョも、好きだ - http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20080803/p1#c メッセージというのは、 相田みつをくらい ストレートでないと 伝わらないものなのだ。 つくづく痛感した。 『崖の上のポニョ』という作品が …

月蝕歌劇団 『<津山三十人殺し>幻視行』

数年ぶりに月蝕歌劇団を観てきた。 かつてのような華やかさはないけれど質実剛健で、安心して暗闇に身をまかせることの出来る良い舞台だった。知らない女優さんばかりだったけれど、巧いとかヘタではなしにその演技に感情を揺さぶられた。 『津山三十人殺し…

ポニョとルナティック

昨日、夏目漱石の話を書いていて、ふと古い友人のことを思いだした。 精神病院に強制入院させられた例の彼と会った日に書いた日記があったので、ハードディスクを発掘してみた。 『こころ』だと思っていた文庫本は、『それから』だった。 なるほど、僕は彼と…

ポニョと漱石

宮崎駿監督がポニョを作っている間、夏目漱石をずっと読んでいたというし、「崖の上の」というタイトルや主人公の名前は夏目漱石の小説『門』からとられているという。 しかし、どこにどう夏目漱石がポニョに織り込むまれているのか、そこを指摘している人が…

ヤンキー回帰としてのポニョ

『ジブリの森とポニョの海』を立ち読みしていたら、ロバート・ホワイティングとの対談で「ポニョは笑えるような映画じゃありませんから」と断言していた。*1「ええっ!? そうなの?」と驚いてしまった。少なくとも、劇場で観ていると何度か観客がドッと笑う…

崖の上のポニョ

※ネタばれ注意 642 :名無シネマ@上映中:2008/08/16(土) 09:45:13 I D :XgCLQ9v3 <略> 一連の物語を、もう一度生まれるためのイニシエーションと考えれば、 アレは死後の世界というより、洪水語の世界は生まれる前の胎内だよね。 「死ぬっていうのは、生…

本当はあまり怖くないポニョの都市伝説

http://d.hatena.ne.jp/dog-planet/20080803 ※ネタばれ注意 せっかくなので、もうひとつ都市伝説風に解釈してみた。 みんな誰もが最初に思う、「海水魚を水道水で飼ったら死ぬだろ」というツッコミ。実はこれが物語の伏線だったのだ。あの時点で、まずポニョ…

本当は怖いポニョの都市伝説

- 誤解が多いので、ポニョ関連の記事をまとめました。 一番お勧めは「ヤンキー回帰としてのポニョ」です。 監督がなぜ、こんな珍妙な映画を作ったのか、理解しやすくなるのでは… リアルライブ版『本当は怖いポニョの都市伝説』 http://npn.co.jp/article/det…

映画『L change the WorLd』

ハッキリ言ってモンド映画だろ、コレは…いや、誰の目から見ても明らかにフィクションだから、ホントはモンドじゃないけど、この猟奇で悪趣味なウィルス描写をクソ真面目にやる姿勢というのはどこか狂ってる。なんか差別意識とか教育的配慮とか一切ナシで、こ…

なるたる

なるたる(1) (アフタヌーンKC)作者: 鬼頭莫宏出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/08/19メディア: コミック購入: 9人 クリック: 229回この商品を含むブログ (84件) を見る 年末から、仕事の関係上ワーキングプアについて色々調べている。 最初のうちはすぐ…

小林大吾 『詩人の刻印』

中原中也は朗読することを前提に詩を書いた。 女たちは、目の前で朗々と不可解な言葉を並べ立てる小柄な男に最初のうちは微笑みを浮かべ、やがてあきれ果てたという。 たしかに中原中也の詩集がいまだに文庫コーナーで平積みになっているのは、ソフト帽に羅…

演劇実験室◎万有引力『螺旋階段』

舞台の中央には黒い帽子に黒いブラウス、黒いスカートの女性がうずくまっている。 やがて彼女は目覚めるように動き出し、手のひらに乗った目に見えない何かに息を吹きかける。その見えない「何か」は客席の至るところにバラまかれ、彼女は不気味な笑みを浮か…

『ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語―夢の楽園』展

原美術館の「ヘンリー・ダーガー展」 へ行って来た。 実は原美術館て自宅から徒歩でいけるほど近いし、犬の散歩でしょっちゅう前を通っていたが、なんとなくネーミングからしてジジババ臭いような気がして、どうせ壺とかキルトとか展示してるんだろうなと勝…

テレビアニメ 『ひぐらしのなく頃に』

アニメ版『ひぐらしのなく頃に』にハマってしまった。ゲームは長そうなのでやってない。 一個人がどんな作品を好むかなんていうのは「当事者性」によるところが大きいわけで、単に自分の置かれた状況に照らし合わせて共感してるだけなんだろうなと思う。なの…

映画『裸の十九歳』

図書館でビデオを借りた。 モノクロ映画だった。モノクロには「きっと退屈で寝る」という偏見があったのだけれど、まったくそんなこともなく、面白かった。 最大の見所は若かりし頃の原田大二郎がオーケンそっくりなのと、音楽がジャズギターとジャズピアノ…

『ワラッテイイトモ、』

変えてもいないのによく、「メガネ変えた?」と訊かれる。こういう天気の話レヴェルの日常会話があまり得意ではないので、こういった質問を毎日間断なく速射砲のごとく連発できる人々の感性には憧れるところがある。だから「最近ちょっと太った?」とか「髪…

デカレンジャーにおける夢魔考

学校の清掃用具入れから遺書と共にクラスメイトの死体が発見される夢。飼っていたモルモットを誤って足の裏で踏みつけて殺してしまう夢。白米を食べるたび歯がボロボロと抜け落ちる夢。無数のカエルが上空より落下してきてアスファルトに叩きつけられ濁音を…

映画『コンクリート』

それはコンクリート詰め殺人事件のときもそうだったんだけれども、彼女がどういうふうに性的な陵辱を受けて、どういうふうに性的なリンチを受けて、彼女の遺体がどうだったのかというのを、なぜ、ここまでね、報道の名の下に再現しなければいけないのかって…

月蝕歌劇団『家畜人ヤプー』

20世紀末、第三次世界大戦が勃発。大戦は英国の圧勝に終わり、白人が全覇権を握る世界政府<イース帝国>を建国。白人絶対優位の思想がかかげられ、黒人は奴隷と化し、黄色人種は滅ぼされた。唯一滅亡をまぬがれた日本人は白人に奉仕するためだけの家畜<…

『ライフ・イズ・ビューティフル』背徳の微笑み

ロベルト・ベニーニ監督の「ライフ・イズ・ビューティフル」は実に良い映画だった。血も涙もない僕ですら思わず目頭が熱くなった。とはいえこの映画、そう容易く泣かせてくれるような<感動巨編>なんかではない。純然たるコメディであり、強いて言えばコメ…