犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

ちぃたん☆グッズ300円セールに思うこと ~暴落? はたまたデッドストック?~

 

 

 話題のちぃたん☆グッズが300円で大売り出しされているという話。

 たしかに2700円のぬいぐるみが300円になっていれば「大暴落」とも言いたくなる。

 ただ、このお店は300円均一のお店で、ちぃたん☆グッズだけでなく同時に有名キャラグッズなんかも大量に売られているらしいので、正直、こんかいの騒動と関連性があるかどうかは微妙だなとも思う。

 

 でも、これだけ大量のデッドストックが出てきたというのは以前、耳にした話と一致する。

 

 クリーブラッツはフォロワー水増しやテレビ出演などによってあたかも人気があるように印象づけて、ちぃたん☆グッズを業者に大量に作らせていたという。

 だが実際には思ったほど売れずに不良在庫が積み重なり、メーカーは赤字。

 しかしクリーブラッツは売り上げに関わらず、生産した分だけロイヤリティ(使用料)を受け取るので儲かる。だから、なるべく多く生産させたがるというのだ。


 これは人気を水増しして、正当な評価よりも高く売りつけているということなので、消費者庁が定める「優良誤認」にあたる可能性がある。

 

優良誤認とは|消費者庁

  1. (1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの
  2. (2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの

 

 ▼ちぃたん人気の真価が問われる

 だが今回、実際に300円のちぃたん☆グッズの売り上げで、真のちぃたん☆人気をはかることができるかもしれない。

 今回の騒動、テレビや雑誌の報道ではやや「ちぃたん☆寄り」の意見が見受けられる。問題の本質がきちんと伝えられていないため、芸能人もたいていはちぃたん☆擁護にまわっている。

 だとすれば、以前よりもちぃたん☆の知名度も人気も高まっているはずで、報道によるデメリットはほぼ無いに等しい。

 この状況で300円というお手軽価格で商品が大量に出回れば、即完売もありうるだろう。

 この記事を書いてる時点ではまだ、けっこう在庫はあるようで、ファンたちはよろこんで大量買いしている様子がツイッターなどで流れてくるが…

 

▼ババを引くのは誰か?

 また、クリーブラッツはすでにロイヤリティとして利益を享受しているので、この大売り出しによってちぃたん☆グッズが売れても何の影響もない。

 売れるとこまで売り切ろうとしているという批判はちょっとズレている。

 むしろクリーブラッツはすでに、売り抜けているから裁判沙汰になって賠償金などを請求されない限りは、儲けを確保したまま逃げ切り確定なのだ。

 

 だから、むしろ値下がりしたちぃたん☆グッズをファンが購入するのは、ある意味、被害者であるちぃたん☆グッズを制作してしまった業者や、グッズを仕入れてしまった小売店の赤字を少しでも減らすことになる。

▼問題の本質は、むしろココにある

 本当の観光大使コツメカワウソだったとか、いやいや本当に問題なのは商標登録を取ろうとしていたことだなど、ツイッター上でのみ議論は盛んだが、今回の騒動、僕は本当に問題だったのはこのクリーブラッツの商売のやり方にあったのではないかと推測している。

 たしかに、そのへんのご当地キャラよりもちぃたん☆グッズが売れるのは間違いないだろう。少なくとも、僕の運営しているキャラの数百倍は稼いでいるに違いない。
 だが、その商売のやり方では被害者が出る。
 とあるコラボカフェでも思ったほど収益があがらず、これではちぃたん☆よりも人気のない他のキャラではもっと動員出来ないだろうから中止しようということになったともいう。つまり、ちぃたん☆によって市場が荒らされると、後続のキャラにも被害が及びかねない。

 本当はきちんと適正な見込み客数を計算し、適切な規模でグッズ展開やイベントを開催すればいいだけなのだが、利益を上げるために水増しをするから被害を被る者が出てきてしまうのだ。

 今回、ゲームや雑誌などで中止となった企業コラボは多数あるが、まだ未払いであればその分は支払われない可能性もあるが、すでに支払われている分を返せとか、賠償請求する企業は少ないのではないだろうか?

 

 ちぃたん☆を運営するクリーブラッツに悪評が立てば、その元となったしんじょう君も同等に扱われかねない。むしろちぃたん☆を世に出し、その人気を牽引した「責任」もつきまとう。その「責任」を感じたからこその、今回の告発だったのではないかと僕は周辺の人々からの話を聞いて思った。

 また、繰り返しになるが、須崎市の道の駅や高知空港にもちぃたん☆のおみやげものは数多く並んでいた。
 ご当地キャラグッズはむしろ、愛の深いファンが購入するキャラグッズよりもお土産需要の方が儲かるという指摘は『ゆるキャラ論』に書いたとおりだ。
 クリーブラッツはもちろん、そっち方面にも手を伸ばしていて、本来ならしんじょう君グッズや、他の高知県の名産品が置かれるべき売り場面積を侵食しつつあった。
 つまり、観光大使としての役割もあまり果たしていないのに、高知とは無縁の東京のキャラクターが、ちゃっかりおいしい部分だけかっさらって行こうとしているのだ。

 これは須崎ばかりか高知県全体の損失にもつながりかねない。

 

 しかし一方で、やり方の是非や企業倫理としてどうかという問題はともかく、違法性はまったくない。むしろ「企業努力」として称賛する人もいるだろう。
 だからこそ、行政である須崎市はそこを指摘することができない。

 かなり無理のある「観光大使に任命したのはコツメカワウソの方で…」とか「商標登録」を横取りされそうになったなど、一般人には理解しがたく、かなり無理のある理由でちぃたん☆を告発し、対立せざるをえなかったのではないか。

 少なくとも商標登録に関しては一度、ちぃたん☆は特許庁に拒絶されている。

 法的根拠のない声明を市役所が発することはできないから、この一点のみに絞って勝負にでるしかなかった。だが、この論理は一般人にはわかりにくく、一見するとちぃたん☆の側が言いがかりをつけられているようにも見えてしまう。


 法的な正しさと、感情的な正しさは必ずしも一致しないというジレンマが、今回、須崎市が報道メディアや一般視聴者から責められ、炎上する原因だったのだろう。