犬惑星

『ゆるキャラ論』著者・犬山秋彦のブログ

パルスブックウォーカー

紙の本には、電子書籍にはない手触りがある。
装丁やデザインも含めて温もりがあるなどともいう。
そりゃあるだろう。
人それぞれの好みもあるし、否定はしない。

だが、僕にとっては電子書籍こそ小宇宙であり、そこにはロマンが広がっている。
何より画面が発光するのがいい。
美しいし、暗闇でも読める。
紙の本ではそうはいかないし、孤独な夜にスマホの画面を見ていると、そこにはたしかな温度がある。

紙の本には図書館や土蔵のような薄暗いところがお似合いだが、その実、読もうとすれば太陽光を必要とする。
なんと健全で味気ない。
まっとうな趣味嗜好のようでうんざりさせられる。

苦もなく何百冊もの本を持ち出せるのもいい。
この世のすべての本が電子書籍だったらいいのに。
すべての本を街に持ち出したい。
今なら合成音声による読み上げ機能もあるから、寺山修司が夢見たように、走りながらだって読書ができる。
こんなステキなことはない。

活字の宇宙を無限に持ち出し、なにか着想をえれば、それがそのまま筆記用具にもなる。
Googleドキュメントでメモしておけば、パソコンとの共有もたやすいから、せっかく書いたメモ用紙をなくしてアイディアがムダになるなんてこともない。

まあ、残念なのは仕事で使うような資料や希少本の類は電子化されていないことが多いし、まだまだ一般的でないから、紙の本を買っては裁断してドキュメントスキャナで自炊せざるを得ない。

なんだかそれがムダの多い作業で切なくなる。
本棚のすみずみまで、どんなくだらない雑誌の類もすべて電子化してスッキリしたいのに、それには時間が足りない。
そういうサービスもあるけれど、それはそれで、そこまでするほどじゃ…というためらいもある。

CDも初回特典のDVDも、最初からすべて電子化しておいて欲しいと思う。
本当にもう、クラウドでいい。
むしろCDよりデジタル音源にこそPDFなブックレットとかオマケをつけて欲しい。

紙の本やCDに情緒があるなんて嘘っぱちだ。
あるいは、たんなる嗜好の差異でしかないのなら、同じかそれ以上にデジタルだって趣き深い。

デジタルにだって精霊は宿る。
そう思うと、何十年も前に書かれたデジタルデビルストーリーってすごかったなと思う。
荒俣宏帝都物語にも、似たような話、あったな…(´・ω・`)